東京工業大学未来社会創造事業

PROJECT

プロジェクトについて

衛星を用いた測位、すなわちGPS航法が登場したことで、地上交通システムの運航から地球物理学研究に至るまで、様々な分野に革命がもたらされました。と同時に衛星からの電波が届かない地中や海中においても精密な位置推定が可能となると、どのような益がもたらされるのかも明らかとなってきました。さらに皮肉なことではありますが、地上交通システムがGPSに依存するようになったことから、電波妨害や欺瞞行為によって運行上の安全が脅かされる可能性があることも指摘されるようになってきました。GPSに依存せずに自己位置を推定する技術を非GPS航法と呼びますが、その位置精度は角速度を計測するジャイロスコープの性能によって律速されており、GPSのそれには遠く及ばないのが実情です。

私達は原子波干渉とよばれる量子技術を駆使して、ジャイロスコープの性能を向上させる研究を進めています。具体的には原子やイオンが有するド・ブロイ波を用いて干渉計を構築することで、角速度によって生じるサニャック位相を、光波を使った場合に比べて増大させ、ジャイロスコープ性能を向上させます。原子波干渉型ジャイロスコープを実験室環境下で原理実証することはもとより、これを振動や加速を伴う実使用環境下でも機能するセンサーとして実装し、様々なビークルへの搭載を可能にすることを目指します。ジャイロスコープの性能が向上すると、重力異常や鉛直線偏差といった重力の変動が自己位置推定に与える影響が無視できなくなります。この影響は、重力勾配計によって原理的に補正が可能であり、本研究ではジャイロスコープ性能向上後の将来も見据え、重力勾配計に関する基礎研究も併走させています。

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プロジェクトマネージャー
上妻幹旺教授